1. 1on1とは何か
1on1(ワン・オン・ワン)ミーティングとは、上司と部下が定期的に1対1で行う対話の場です。単なる業務報告ではなく、部下の成長支援やモチベーション向上を目的とし、キャリアの希望や悩み、仕事上の課題などをじっくり話し合う時間です。
この手法は、シリコンバレーのIT企業で広まりました。インテルやグーグルなどが、優秀な人材の定着と育成のために導入したのが始まりです。彼らが重視したのは、「部下の話を聴く」「信頼関係を築く」「成長を支援する」という対話文化。人材の流動性が高い環境で、いかに人を活かし、つなぎとめるか。その答えの一つが1on1だったのです。
2. 日本における1on1の状況
日本では、2010年代後半から大企業を中心に導入が進みました。特にコロナ禍以降、リモートワークによるコミュニケーション不足を補う手段として注目され、導入率は急上昇。2022年の調査では、従業員3,000人以上の企業の75%以上が1on1を導入しているという結果も出ています。
一方で、中小企業ではまだ導入率は高くありません。理由はさまざまですが、「忙しくて時間が取れない」「やり方が分からない」「効果があるのか疑問」といった声が多く聞かれます。しかし、実は中小企業こそ、1on1の恩恵を受けやすいと言えるのです。
3. なぜ中小企業に1on1が必要なのか
では、なぜ中小企業が1on1の恩恵を受けやすいのか。その理由は以下の通りです。
・採用が難しく、人材定着が困難である
中小企業では、若手人材の採用が年々難しくなっています。給与やブランド力で大企業に劣る中、採用後の定着が極めて重要です。1on1で社員一人ひとりと個別に向き合うことで、「自分を見てもらえている」という実感が生まれ、離職防止につながります。
・人材育成の仕組みが未整備
多くの中小企業では、人材育成はOJT頼み。決まった育成担当者がいないことも多く、体系的な育成が難しい状況にあります。1on1は、社員が「何に困っているか」「何を伸ばしたいか」を把握する場になります。また、社員の業務上の悩みを知ることは、会社が抱える課題や成長のための打ち手を考えるきっかけにもなります。
・コミュニケーション不足が起きがちである
「上司と話す機会がない」「相談できる雰囲気がない」といった声は、離職理由の上位に挙がります。中小企業において、上司は現場を抱えていることが多く、部下にとって、相談が難しいこともあります。1on1は、定期的な対話を通じて社員の心理的安全性を高め、社員と会社の信頼関係を築く手段になります。
・エンゲージメントを高めることが難しい
日本企業の従業員エンゲージメントは、世界的に見ても低水準です。やる気や主体性が引き出せないまま、組織の活力が失われていくケースもあります。1on1を通じて、社員一人ひとりの価値観や希望に寄り添うことは、エンゲージメントを高めることにつながります。
・現場の声を経営に活かせていない
経営者が現場の課題を把握できず、施策が的外れになることも少なくありません。1on1を通じて「現場のリアル」を吸い上げることで、制度や方針の改善に活かすことができます。
・評価制度やキャリア支援の不透明さ
「自分はどう評価されているのか」「将来どうなれるのか」が見えないと、社員は不安を感じます。1on1でキャリアの希望や不安を共有し、社員一人ひとりの成長の方向性を一緒に考えることができます。
まとめ:「採用<育成」の時代にこそ、対話が必要
中小企業にとって、最も大切なのは「人」です。採用が難しい今だからこそ、今いる人材をどう育て、どう活かすかが問われています。
1on1は、特別な制度や高額なツールがなくても始められる「人を活かす仕組み」です。大切なのは、対話を通じて「人を見て、聴いて、支える」こと。少しずつでも取り組みを始めることが、組織の未来を変える第一歩になります。
コメント