はじめに
1on1ミーティングは、社員の成長支援や離職防止に効果的な手法として注目されています。しかし、導入しても「うまくいかない」「形だけになってしまう」といった声も少なくありません。その原因の多くは、面談者の育成不足にあります。
今回は、中小企業が1on1を定着・活用するために欠かせない「面談者育成」について、具体的なポイントを解説します。
1. なぜ面談者の育成が必要なのか
中小企業では、社長や現場リーダーが面談者になるケースが多く、1on1の経験がないまま実施されることもあります。その結果、以下のような問題が起こりがちです。
- 業務報告や指示ばかりになり、対話にならない
- 評価や説教の場と誤解され、部下が本音を話さない
- 面談者ごとに進め方がバラバラで、想定した効果が得られない
1on1は「話す場」ではなく「聴く場」です。面談者がその本質を理解し、適切なスキルを身につけることで、1on1は初めて機能します。
2. 面談者に求められる基本スキル
面談者に必要なスキルは、特別なものではありません。以下の4つが基本です。
- 傾聴力:相手の話を遮らず、否定せず、最後まで聴く力。うなずきや相づち、沈黙の受容も含まれます。
- 共感力:相手の感情に寄り添い、「わかるよ」「それは大変だったね」と受け止める姿勢。アドバイスよりも共感が信頼を生みます。
- 問いかけ力:「どう思う?」「なぜそう感じたの?」と掘り下げる質問で、相手の考えを引き出します。Yes/Noで終わらない問いが重要です。
- フォロー力:話した内容を記録し、次回につなげる。約束したことを守ることで、信頼が積み重なります。
3. 面談者育成のステップ
中小企業で面談者を育てるには、以下のような段階的な取り組みが効果的です。
- ステップ1:目的の共有
「1on1は評価ではなく、支援の場である」と明確に伝え、社内で共通認識を持つことが第一歩です。 - ステップ2:進行の型を共有
基本ステップ(アイスブレイク→振り返り→本題→まとめ)をテンプレート化し、誰でも一定の質で進められるようにします。 - ステップ3:質問例・記録シートの提供
話題に困らないよう質問集を配布し、記録シートで振り返りを促します。Excelや紙でも十分です。 - ステップ4:ロールプレイ研修
実際に1on1を模擬体験することで、聴く姿勢や問いかけのコツを体感できます。社内で簡易的に実施可能です。 - ステップ5:振り返りとフィードバック
面談者同士で「うまくいったこと」「困ったこと」を共有し、改善につなげます。月1回の振り返りミーティングがおすすめです。
4. 面談者の選び方と育て方
面談者に適任な人材は、以下のとおりです。
- 部下との信頼関係がある人
- 話を聴く姿勢がある人
- 育成に関心がある人
- 自分の考えを押しつけすぎない人
最初は社長や幹部がモデルとなり、徐々に現場リーダーへ展開するのが理想です。もし社内に適任者が見当たらなければ、当初は外部人材を活用するのも手です。また、面談に苦手意識がある人でも、型通りに行うことである程度対応できます。
組織的に対応するのであれば、管理職研修やリーダー研修などで面談者育成を同時に行うのも有効です。
5. よくある失敗と対策
1on1がうまくいかない原因と対策を、以下にまとめておきます。
| 失敗例 | 対策 |
|---|---|
| 業務報告だけで終わる | 質問テンプレートを活用し、感情や希望に触れる |
| 面談者が一方的に話す | 傾聴の姿勢を研修やロールプレイで体感させる |
| 面談者ごとに質がバラバラ | 進行ステップと記録シートを統一する |
| 継続できない | スケジュールに組み込み、月1回でも続ける |
まとめ:面談者を育てることが、組織を育てること
中小企業だからこそ、社員一人ひとりとの距離が近く、対話の力が組織全体に波及します。1on1が定着することで、コミュニケーションが活発となり、社員のエンゲージメントが高まります。
面談者を育てることは、社員を育て、組織を育てることにつながります。取り組みやすく、効果の上がりやすい人材投資と言えると思います。ぜひ取り組んでみてください。
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