中小企業におけるベテラン社員活用の制度と方法

目次

1. はじめに

少子高齢化が進む中、企業における人材確保はますます困難になっています。特に中小企業では、若手採用の難しさに加え、既存社員の高齢化が進行し、組織の活力低下が懸念されています。こうした状況下で、ベテラン社員の活用は単なる人材維持策ではなく、組織変革の起点となり得る重要な経営課題です。

本稿では、中小企業がベテラン社員を活かすためのヒントを述べたいと思います。

2. 役職定年制度とは

役職定年制度とは、一定年齢(多くは55歳)に達した管理職が役職を退く制度です。雇用契約は継続されるものの、役職を外れることで給与体系や業務内容が変更される場合があります。最近まで、多くの大企業で採用されていました。

この制度の目的は、組織の若返り、ポストの流動化、人件費の抑制などです。1980年代後半から1990年代にかけて、大企業を中心に導入が進みました。定年延長や高年齢者雇用安定法の改正が背景にあり、年功序列型組織の硬直化を防ぐ手段として機能してきました。

中小企業における役職定年制度の導入率は、従業員100人以下の企業で約20%程度と低水準です。これは、管理職ポストの絶対数が少ないことや、制度導入による人事トラブルへの懸念が背景にあります。その結果、中小企業は制度の導入が進まず、大企業と比べて社員の高齢化が一段と進んでいると考えられます。

3. 社員の高齢化の問題

多くの中小企業では、社員の高齢化が進行しているにもかかわらず、活力低下への対策が十分に講じられてきませんでした。人手不足の中、採用が難しくなり、組織の新陳代謝が滞り、若手の登用やイノベーションが進みにくい状況も生まれています。

また、ベテラン社員が抜けると、会社にとって大切な「技術」や「経験」も一緒に失われることも大きな問題です。人手不足が問題となっている昨今、ベテラン社員といえども、今までの役割を超えて、新しい技術の取得や後進の育成にかかわらざるを得ないのが、中小企業の現状なのです。

4. ベテラン社員の選抜

本稿の趣旨は、役職定年制度を取り入れようということではありません。実は、大企業では近年、役職定年制度の廃止が進んでいます。年齢による一律の降格がモチベーション低下を招くことや、ジョブ型人事制度への移行、技術継承の必要性などが背景です。代わって導入されているのが「選抜型制度」です。

選抜型制度とは、年齢ではなく「評価」「役割」「意欲」などを基準に管理職継続を判断する仕組みです。一定以上の評価であれば、年齢に関係なく、管理職への継続登用を可能にしています。無理に若返りを図ろうとするのではなく、ベテラン社員の能力を生かし、活力を保ちながら、会社に必要な戦力の維持・拡大を考えているのです。

選抜型制度の本質は、「年齢による一律処遇」から「能力と意欲による選抜」への転換です。そして、中小企業こそ、「能力と意欲による選抜」によって、ベテラン社員にチャレンジングな機会や役割を与え、うまく活用することが求められているのです。

5. ベテラン社員活用のヒント

中小企業がベテラン社員を活かすためのヒントを、以下に3つご紹介します。

① 柔軟な配置

年齢や役職に縛られず、個々の社員の強みや経験を活かした柔軟な人材配置を検討します。中小企業の場合、「専門職」「社内教育担当」のような定型的な役割にとどまらず、個人の能力や意欲に見合い、適切な業務量なども考慮した柔軟な人員配置が可能です。個人の特性を理解するためには、1on1ミーティングや自己申告制度を活用し、社員の意向や本音を知る機会を持つことも重要です。

② 処遇と役割の再設計

役職を外れた社員に対しても、役割の重みやチャレンジに応じて納得感のある処遇を設計することが方策の一つです。役職を外れると報酬が下がることが通常ですが、インセンティブ報酬を取り入れることで、社員のモチベーション維持と組織貢献を両立することが可能です。

③ キャリア支援と納得形成

これまでと違った役割・働き方を求める場合、キャリア研修や個別面談等を通じて、社員の不安を払拭し、納得形成を図ることが不可欠です。特に中小企業では、経営者がその社員への期待や職務の意義・重要性を語り、社員との信頼関係を築くことが成否を左右します。

6. おわりに

中小企業においては、限られた人材資源を最大限に活かすことが経営の根幹です。ベテラン社員の活用は、単なる人事施策ではなく、組織文化の刷新や事業変革の起点となり得ます。

ベテラン社員に対しても、能力・意欲・役割に応じた柔軟な人材配置を適用することで、社員の活力を引き出し、会社全体の成長につなげることが可能です。

今こそ、中小企業だからこそできる「人を活かす仕組み」を構築し、実践に踏み出す時です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次