中小企業の事業承継を進めるためには

事業承継は、多くの中小企業にとって課題です。政府も、後継者難による廃業の増加に危機感を募らせています。今年度(平成30年度)改正された「事業承継税制」は、かなり踏み込んだ内容になっています。

 しかし、事業承継への取組みが進んでいるかというと、私には、それほどでもないように思われます。政府や私たち支援者と経営者の間には、何か意識の相違があるような気がします。

1.なぜ事業承継が進まないのか

私が考える「中小企業の事業承継が進まない理由」は、以下のとおりです。

① 中小企業の多くは「家業」である

 中小企業の社長は、創業家から会社を受け継いだオーナー社長が多いと思います。「中小企業が家業である」とは、家業が「家族の生計を立てるための手段」であり、「経営が世襲的に継承される」という特色を指します。

 「家業」の特徴の一つは、「収入に対する考え方」にあります。「家業」は「働いて稼ぐ」と考えます。このため、「事業が収入を得ることに集中する」傾向があります。例えば、製造業であれば「作ること」に集中します。このため、「作ること」以外のことは、社長以外にできる人がいないことが多いのです。

 もう一つは、経営について「人材育成がほとんど行われないこと」です。家業は、経営が、親から子に引き継がれます。子ではない従業員に経営を引き継ぐ考えが、そもそも起こりにくいのです。

 「家業」的な経営には、よい側面もあります。しかし、事業承継について言えば、血縁関係の中に後継者がいなければ、家業の事業承継は実質的に不可能と言えます。

② 人間は自分の「老い」を知ることができない

 もう一つは、「認知的バイアス」によるものです。誰でも、自分が今何歳か知っているし、毎日、鏡で自分の顔を見ます。しかし、病気になってはじめて、自分の健康状態がわかるように、「老い」を自覚することは難しいのです。このため、自分だけは「まだ大丈夫」と思いがちになります。事業承継についても、「まだ自分には関係ない」と思いがちで、対応が後手に回るのです。

2.どうすれば事業承継を進めることができるか

① 事業承継を進める最初の質問

適切なタイミングで事業承継対策を講じなかったため廃業せざるを得なかった

 このような事態が増えています。政府が、事業承継対策を急ぐのは、このためです。専門家の育成も着々と進められています。

 しかし、専門家向けの手引書を見ると、最初に確認すべきことは、

後継者は決まっていますか?

となっています。

 しかし、多くの経営者が悩んでいるのは後継者がいない」ことです。そこをあえて「後継者は決まっていますか?」と聞くのは、私には少し間抜けな気がします。

 私は、最初に行うべき質問は、

会社を引き継ぎたいですか?

 だと思います。

 事業承継を行うかどうかは、究極的には、社長が決めることです。事業承継への取組みが進んでいないのは確かに問題ですが、社長がその気にならない限り、事業承継を進めることはできません。社長に引き継ぎたい気持ちがあり、支援を受ける意思があって、はじめて事業承継支援が前に進むのです。

② 事業承継を進める次のステップ

 「会社を引き継ぎたいですか?」と質問しても、次に「後継者問題」を解決する必要があります。しかし「引き継ぐ意志」が明確であれば、やる方法はあります。

 「家業」の対義語は「企業」です。企業は「ゴーイング・コンサーン」、つまり「存続が前提」です。企業が存続するためには、経営者交代が必ず起こります。 

 また、「企業の経営者に求められる資質や経験」というのは、大体明らかになっています。準備期間があれば、既存人材を育成したり、よそから連れて来るなどして後継者を作ることもできます。今の事業を、より魅力的なものにして、引き継ぎやすい会社に変えることもできます。外部の支援者を活用して、これらを効率的に進めることも有効な手段です。

 では、誰に支援を依頼するのがよいか。手前味噌ですが、私は「中小企業診断士」が一番だと思います。診断士であれば、無理のない中長期的な承継計画を作ることも、社長の考えに耳を傾けることも、同時にできるからです。

 これまでの「事業承継」のノウハウは、相続や節税対策等、ほとんどが「家業としての承継」に関するものです。これらは、税や法律の知識が必要であ

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