中小企業が大きくなるためのステップ

中小企業の経営者と話していると、共通して耳にする悩みがあります。
「売上が伸び悩んでいる」
「新しい事業を始めたいが、どこから手をつければいいかわからない」
「人を採用しても育たない」
「社長である自分が忙しすぎて、会社が回らない」
これらは一見バラバラの問題に見えますが、実は根本原因は同じです。
企業の成長ステージに合わない経営をしていることが多いのです。
アメリカの起業家 Michael Masterson は、企業の成長をいくつかのステージに分け、
ステージごとにやるべきことはまったく違うと明確に示しました。
この考え方は、日本の中小企業にも驚くほど当てはまります。
むしろ、日本の経営者こそ知っておくべき「成長の地図」と言えます。
この記事では、企業規模に応じて何をすべきで、何をすべきでないのかを説明します。
1. 企業の成長には「ステージ」がある
業種によって幅はありますが、企業の成長ステージは、大きく 4 つのステージに分けることができます。
- ステージ1:売上 0〜1億円
- ステージ2:売上 1〜10億円
- ステージ3:売上 10〜50億円
- ステージ4:売上 50億円以上
こちらの従業員数ベース(社長は含めない)の企業規模で考えても結構です。
- ステージ1:従業員数 0〜7人
- ステージ2:従業員数 8〜49人
- ステージ3:従業員数 50〜343人
- ステージ4:従業員数 343人~
重要なのは、
ステージが違えば、経営者がやるべきことも変わる
という点です。
たとえば、ステージ1の企業がステージ3の企業の真似をしても成果は出ません。
逆に、ステージ3の企業がステージ1のやり方を続けると、成長が止まります。
つまり、
「自社がどのステージにいるのか」を正しく理解することが、成長の第一歩
なのです。
2. ステージ1:売れる商品をつくる段階
日本の中小企業で最も多いのが、このステージです。
創業期〜小規模事業の段階で、社長がほぼすべての業務を担っています。
- 営業
- 現場
- 経理
- マーケティング
- 顧客対応
すべて社長がやっている状態です。
この段階で最も重要なのは、
「売れる商品」をつくること
ただ一点です。
■ ステージ1で「やるべきこと」
① 売れる商品(サービス)をつくる
日本の中小企業では、技術力やこだわりが強い企業ほど、
「自分たちが作りたいもの」
から始めてしまう傾向があります。
しかしステージ1で必要なのは、
「お客が本当に困っていることを最短で解決する商品」
です。
完璧である必要はありません。
むしろ、完璧を目指すほど売れるタイミングを逃します。
② 売れるまで改善し続ける
ステージ1の本質は、
「売れるまで改善し続ける」ことです。
商品を作っても、最初から売れることはほとんどありません。
売れない理由を探し、改善し、また売る。
この繰り返しがステージ1の突破条件です。
■ ステージ1で「やってはいけないこと」
- 組織づくりに時間をかける
- 完璧な商品を作ろうとする
- ホームページに過度に投資する
- 採用を急ぐ
- 多角化する
特に日本の中小企業では、
「まず組織を整えよう」
と考える社長が多いのですが、これは逆効果です。
ステージ1は、
社長が売るしかない段階
です。
3. ステージ2:新商品の開発と販売をスピード感をもって進める段階
ステージ1を突破すると、売上が安定し始めます。
しかしここで多くの企業がつまずきます。
理由は、
「商品が一つだけでは成長が止まる」
からです。
ステージ2の本質は、
「新商品を次々と開発し、スピード感をもって市場に投入すること」
です。
■ ステージ2で「やるべきこと」
① 新商品の開発
ステージ1でヒット商品が生まれたとしても、それだけでは成長は続きません。
市場は変化し、競合は追いついてきます。
だからこそ、
次の柱となる商品を開発し続けることが必要
です。
② スピードを重視する
ステージ2のキーワードは「スピード」です。
- 完璧を求めない
- まず市場に出す
- 反応を見て改善する
このサイクルを高速で回すことが、ステージ2の成長を決めます。
③ 人材採用を慎重に進める
ステージ2では、初めて本格的に採用を検討します。
ただし、採用は「人数を増やすこと」ではありません。
新商品開発と販売を加速するために必要な人材を、
慎重に、戦略的に採用する
ことが重要です。
■ ステージ2で「やってはいけないこと」
- 仕組み化に力を入れすぎる
- 組織づくりに時間をかける
- 採用を急ぎすぎる
- 商品開発のスピードを落とす
ステージ2では、
仕組み化よりもスピードが優先
です。
4. ステージ3:優秀な人材の採用と組織化・仕組み化の段階
ステージ3では、“社長の限界”が成長の限界になります。
ステージ3の本質は、
「優秀な人材を採用し、組織をつくり、仕組み化を進めること」
です。
■ ステージ3で「やるべきこと」
① 優秀な人材の採用
ステージ3では、
“普通の人材”では会社を伸ばせません。
- 部長クラス
- マネージャー
- 専門職
こうした“優秀な人材”を採用し、会社の中核を担ってもらう必要があります。
② 組織化
ステージ3では、組織が自走する状態をつくることが重要です。
- 部門の明確化
- 権限委譲
- 評価制度
- 会議体の整備
これらを整えることで、社長がいなくても会社が回るようになります。
③ 仕組み化
ステージ3では、初めて本格的に仕組み化が必要になります。
- 業務プロセスの標準化
- KPI管理
- 部門別採算
- マニュアル化
これらが整うことで、組織は安定し、成長が加速します。
■ ステージ3で「やってはいけないこと」
- 社長が細部に口を出し続ける
- 事業を増やしすぎる
- 部下の部下に社長が直接話をする
- 各マネージャーに業務の細部まで報告させる
ステージ3では、
社長が“現場の主役”から“組織の設計者”に変わること
が求められます。
5. ステージ4:社長が経営から退く段階
ここまで来ると、会社は完全に組織で動くようになります。
ステージ4の本質は、
「社長が手放す勇気を持ち、現場から離れること」
です。
■ ステージ4で「やるべきこと」
① 社長が現場から離れる
ステージ4では、社長が現場に関わりすぎると、会社の成長が止まります。
- 現場判断は経営チームに任せる
- 社長は戦略と資本配分に集中する
- 組織の自走を妨げない
これがステージ4の経営です。
② 経営チームの強化
社長が退くためには、
経営チームが強くなければいけません。
- 役員
- 幹部
- マネジメント層
彼らが意思決定できる状態をつくることが重要です。
③ 長期戦略の策定
ステージ4では、社長は「未来をつくる仕事」に集中します。
- 長期戦略
- 投資判断
- 事業ポートフォリオの最適化
これらが社長の役割になります。
■ ステージ4で「やってはいけないこと」
- 社長が現場に戻る
- 感覚で意思決定する
- 組織の問題を放置する
ステージ4は、
「社長が会社を“経営”する段階」
と言えます。
6. まとめ:自社がどのステージにいるかを知ることが、成長の第一歩
Masterson の成長ステージ論が教えてくれるのは、
企業はステージごとにやるべきことが違う
というシンプルな事実です。
本稿の成長ステージ論を要約すると、以下の通りになります。
■ ① ステージ1では「売れる商品づくり」がすべて
他のことは後回しで構いません。
■ ② ステージ2では「新商品開発とスピード」が最優先
仕組み化よりもスピードが重要です。
■ ③ ステージ3では「優秀な人材の採用と組織化・仕組み化」が鍵
社長の限界が会社の限界にならないように、仕組み化、組織化を進める段階です。
■ ④ ステージ4では「社長が手放す勇気」が成長を決める
社長が現場から離れ、経営チームに任せることで、会社はさらに伸びます。
企業の成長は、努力量ではなく、
「正しいステージで、正しいことをやるかどうか」
で決まります。
自社がどのステージにいるのかを見極め、その段階に合った経営を行うことで、
中小企業は無理なく、着実に成長していくことができます。
私は、クライアントをよく理解していない段階でも、この考え方を活用し、
クライアントの課題を、おおざっぱにイメージするようにしています。
何かご相談がありましたら、どうぞご連絡ください。
参考:
Michael Masterson “Ready, Fire, Aim ” (邦題:マイケル・マスターソン「大富豪の起業術」ダイレクト出版)

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